さくらと小狼の初デート


影がだんだん長くなってゆく。もうすぐ日がしずむのだ。
そろそろと太陽は地平線に近づいて、顔をかくそうとする。
「どっちのぬいぐるみがすき?」
小狼は意を決して、さくらに聞いてみた。さくらはふしぎそうな顔をしている。
「わたしがすきなのは、このうさぎさんだよ」
と、言って小狼が渡したほうのぬいぐるみを自分の顔の高さにもちあげて見せた。
「くじで当てたぬいぐるみのほうが人気だし、おおきいし」
「それでも、小狼君がくれたうさぎさんだよ」
「どうしてだ?」
「だって、わたし、小狼君がすきだから。だから、いちばんの人からもらったものもいちばんなんだよ」
にこにこした表情でさくらがほほえむ。
そんなことを言われていやな人はいない。ましてや、それがさくらだったら…
「そ、そっか・・・いや、それならよかった」
安心した小狼はさくらに顔を向けた。
さっきの言葉に、うれしさをかくしきれず、自然とやさしい笑みになったのでした。
さくらはその表情に見惚れて、思わず下に瞳をやる。
「それより、映画でハンカチおとして、迷惑かけてごめんね」
そのときのことを思いだして ボッ とふたりは同時に顔が真っ赤になった。
「め、迷惑だなんて!おれのいちばんはさくらなんだ。さくらといっしょにいるだけでしあ… えっと、あの…だから気にするな」
「え、あ…うん」
さくらは両手にかかえていたモコナをもつ指に自然に力がはいる。
夕日のせいだろうか。あたりくじのおおきなぬいぐるみのおでこについている赤い装飾よりもふたりの顔は赤かった。
そのせいで、ふたりともおたがいの顔を見ることができなかった。
太陽がいつの間にかふたりの会話に耳をすませていたらしい。
さきほどよりもじれったく、ゆっくりとしずんでいく。



きづくと、さくらの家のまえに着いていた。
「今日は本当にありがとう。たのしかったよ!それから、おくってくれてありがとう
「いや、おれも…たのしかった」
「よかった!バイバイ」
「ああ、じゃあな」
そう言ってさくらは手をふり、小狼は微笑しつつ、手をふりかえした。
さくらはゆっくりと家の扉をひらき、そしてゆっくりと扉をしめる。さくらが家の中に姿を消した。

はなれたくない。もっとそばにいたい
そんなきもちをいだきあう人たちは世界にどれくらいいるのだろう。
まるで、奇跡のようなこと。だからこそ、太陽は味方してくれたのかもしれない。
少しだけ長かった夕方は、もう終わる。
夜へのいりぐちに背を向けて、小狼は歩をすすめ、帰路に着いたのでした。

だが、二人は最後まで気付くことがなかった。
お互いの言葉がそれぞれココロに残っていて、大切に大切にココロの小瓶にそっとしまったということを。

そして、知世ちゃんとケロちゃんがずっと、尾行していたということを。




  


最後の“知世ちゃんとケロちゃんが〜”は笑うべきトコロです(苦笑)
第3話はほかの2話に比べてやや短いんですよね;;
ちゃんと計画的に話を分割しないから、こんなコトになるんですよね。もっと修行せねばっ!!
管理人自身は、小説に出てくる情景描写や比喩表現というものが好きなのですが、自分で書くとなるとどうしても難しいです・・・OTZ
今回、無理やり太陽を比喩で入れてみたのですが、太陽は私の味方にはなってくれませんでした(苦笑)
初デートなんて、ベタなネタですみません;
いつまでも、初々しいさくら×小狼が大好きな管理人です♪

管理人:咲良 ひとむより
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