さくらと小狼の初デート


ピンポーン

「はぁーい」
さくらが元気よく玄関のドアをあけると、知世と小狼が立っていた。
二人はにっこり笑うと「おはよう」「おはようございます」と、それぞれの言葉であいさつした。

「それではさっそく、おふたりとも着替えてくださいな」
にっこり顔の知世が2つのおおきな紙袋をふたりに手渡す。



「これ、かわいいね。ありがとう」
「さくらちゃんにそう言ってもらえれば本望ですわ」
さくらの服はワンピースで全体が空色。ヨモギ色の花びらのもようがスカートのすそに沿ってデザインされ、黄色のリボンがポイントになっている。えりはセーラー服のような感じになっている。
スカート丈は、さくらがいつも来ている制服よりもすこしし長くて清楚な感じで。
「か、かわいい…」
いつのまにか、着替えおわり、呆然と立ちつくして見ていた小狼。
ハッと小狼のほうを見たさくらも思わず、
「かっこいい…」
とつぶやいておりました。
小狼のは学ランのようなかんじで、色合いはさくらとおなじ。違うのはすそが花びらではなく黄色のラインで、リボンの代わりに羽根のバッヂがついている。
そのとき、とつぜんどこからか携帯の着信音。
あわてた様子の知世が携帯をかばんから出して、電話に出た。
「おはようございます。ええ、はい…分かりました」
電話を切ると、知世は残念そうにさくらのほうを向きました。
「申し訳ございません。急用ができてしまって…」
「気にしないで!今日はやめて、また今度にでも…」
「いいえ!今日行って来て下さいな。せっかく、お洋服を着てもらったんですもの!!」
「え…い、いいの?じゃあ、ケロちゃん呼んでくるね」
知世は、さくらがケルベロスをよびに階段をかけ上がっていくのをほほえみながら見届けるのでした。
「李君、かんばってくださいね」
「何を?」
「さくらちゃんをエスコートするのですわ」
「ケルベロスがうるさそうだ…」
「ケロちゃんのことなら、だいじょうぶですわ」
「え?」
そこに、こまった顔をしたさくらがリビングにもどってきた。
「どうしたんだ?ケルベロスは?」
「うん・・・ゲームがね、今いいところだからムリだって」
そのとき、小狼はすべてを理解したのでした。
大道寺もケルベロスも、 はか ったな!!!



いま、さくらと小狼は、『翼を失くした青い鳥』という映画を観ている。
ふしぎな力をもつしあわせの青い鳥が、その力をねらう者によって翼をなくしてしまう。
翼をとりもどすため、仲間と旅をし、そして、その旅の中で、みんなは何かを得ていく―――。
という話らしい。どこかで聞いたような話に…似ている…ような…

コトリさんかわいそうだよぅ〜、みんないい人たちだよぅ!
涙ぐむさくら。ハンカチで涙を拭いていると、
あっ!ハンカチが!!
さくらは涙を拭いていたハンカチを誤って落としてしまい…

いい話だとは思うけど、泣くほど…じゃ、ないよな…どう考えても。
と、小狼。
それにしても、…さくら…と、となり…なんだよな…
ふと、あらためて意識してしまったせいか、急に緊張してきてしまった。
その緊張のせいか、小狼はのみものに手をのばした…

「「あっっ…」」
小狼の手の上にハンカチが落ち、それをさくらが思いっきり掴んだのだ。
ふたりはいま、ハンカチをはさんで、さくらが小狼の手を握っている状態。
ボンッ!!!
ふたりは一気に赤面して、手をひっこめる。
「ご、ごめんね」
「いや、べ、べつに…その…」
そんなふたりの前で2羽の青い小鳥がキスをした。
ボボン!!!
赤面どころではない。いままで、必死に気にしていなかった心臓音が急におおきく聞こえた。

どうか、小狼君に聞こえませんように!!
さくらにこの音が届きませんように!!
ドキドキ ドキドキドキ ドキドキドキドキ ドキドキドキドキドキ

もう、ふたりの頭の中はパンク寸前!混乱状態になってしまった。
映画がおわっても、二人はしばらくの間、席を立つことができなかったという―――。



「うわぁ〜、かわいいvv」
映画館の清掃のおばさんが来たところで、ふたりは、すでに自分たちふたりしかいないことに気づき、あわてて出てきたところで、さくらが目の前のお店のショーウィンドウにかけよっていって、言った言葉でした。
さくらが、店の外からショーウィンドウをのぞきこんでいるので、小狼はその店の入り口に目を走らせた。
店は、ぬいぐるみ屋のようで、『只今、ビッグモコナキャンペーン実施中!!』…のようだ。
「入るか」
「うん!」
小狼の一言にさくらは笑顔でこたえ、タタッと軽い足どりで入っていきました。
ふたりが中に入ると、ビッグモコナの見本が置かれていた。
たしかに…でかい…
横目でそんなことを考えている小狼には気づかず、さくらはすべてのぬいぐるみに「かわいい!」と言うので、なかなか商品を選べず、会計までにずいぶんと時間がかかった。

結局、小狼は桜色のSサイズのうさぎのぬいぐるみと緑色のくまのキーホルダーを。
さくらは真っ白な小さいうさぎのぬいぐるみとミニサイズの黄色のくまのぬいぐるみを買った。
どうやら、うさぎが大道寺、くまがケルベロスへのおみやげらしい。
「あ、あの・・・さ、その・・・・・」

「あ〜〜もう、じれったい!!小僧、何しとるんや!!」
「超絶かわいかったですわ〜。先ほどのお手を握ったさくらちゃんvv」
と、影で見ていたケロと知世がそれぞれ心の中でさけんだ。
そう、最初からふたりは 尾けてみて いたのである。

小狼はうさぎのぬいぐるみを真っ赤になりながら、さくらの前に差し出した。
「…これ…い、いるか?」
「いいの?ありがとう!!わぁ〜、このうさぎかわいいね!!欲しかったんだっ!!」
店であれだけ「かわいい」を連呼していたさくらに言われても…と苦笑したが、 このぬいぐるみを見ていたときがいちばんうれしそうだった。小狼はそう思って選んだのだ。
「お金足りなくて、これ買えなかったんの。だから、とってもとってもうれしいっ!!」
そう言ってくれるさくら。
しかし、小狼が本当にさくらがよろこんでくれているのか を不安に思ういちばんの要因は、さくらが両手いっぱいにかかえているビッグモコナなのでした。

小狼とさくらがそれぞれ会計をすませたあと、キャンペーン中というコトでくじをひいた。
当然のように小狼は、はずれをひいた。
けれど、その直後、おおきなベルの音が響いたのだ。
ふりかえると、小狼のうしろでさくらが見事に当たりくじをひきあてたのでした。
ビッグモコナと桜色のうさぎ(Sサイズ)
どう考えても、ビッグモコナの圧倒的勝利にしか思えなかった小狼は、ぬいぐるみを渡したことに半ば、後悔しておりました。

かえりみち―――――
どうしよう…小狼君プレゼントくれたのに、私何もしてあげてないよぅ!!
「あ、あのね、小狼君、このうさぎさん、本当の本当にありがとう」
「い、いや…」
「うさぎさん、かわいいね」
「…どっちが?…」
「…ほえ?」
「い、いや…うさぎのぬいぐるみとビッグモコナ、どっちがいいのかなぁ?…なんて…」
小狼は、思わず口から出てきた言葉にしまった!と思い、あわてていいわけをする。

「まあ、おほほ」
「うぉっしゃぁ!小僧、よく言った!!」
知世はビデオカメラを持ちなおし、ケロちゃんは、グッとこぶしをつくるのでした―――――。







デートしてます(笑)
ほとんど小狼視点。でもでも!さくらちゃん好きな管理人としてはやっぱり小狼視点になってしまうのは、仕方が無いというものなので諦めます。
映画館でのハプニングを書きたかったためだけにデートコースに映画観を選んで書いた、と言っても過言ではありません。
そして、デートにはもれなく知世ちゃんとケロちゃんがついてくるという(笑)
ちなみに、映画の内容は、ツバサをちょっぴりイメージしてます(苦笑)
それにしても、さくらちゃんと小狼が“ビッグモコナ”って言うと、どうしてこんなにも違和感があるのか…(笑)

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