小鳥のさえずり


最初の3日は楽しかった。サクラと一緒に、コトリの世話をすることが
でも、時間が経つにつれて、楽しいことではなくなってしまった。なぜだろう?
「コトリさん、包帯を新しいのに巻きなおそうね」
そう言って、やさしくコトリに話しかけるサクラ。
ピッと鳴いて、自ら包帯の巻かれた羽をサクラに差し出すくらいまでに、コトリは、サクラに慣れていた。
「よし、できた!小狼、外に行こう!コトリさんの飛ぶ練習をしなくっちゃ!」
「う、うん」
なんだろう、この気持ち・・・。一緒にいて嬉しいはずなのに、胸がもやもやする。
「小狼?」
「え?ああ、今行く」
サクラは両手でコトリを、われものを扱うかのように、やさしく抱えて、部屋を出て行く。
小狼も、その後をついていく。けれど本当は、コトリの飛ぶ練習なんてやりたくなかった。

ちょっとだけ宙に浮くが、すぐに地面に落ちてしまうコトリ。
「がんばって!コトリさん!」
コトリをやさしく撫でながら言うサクラ。
ピッと鳴いて、羽を大きくはばたかせる。
もう、何回この光景を見ただろう…?
すると、ふわっと、高く高く空に舞い上がり、ふたりの頭上をくるくる回り始めた。
「わーいっ!小狼、飛べたよ!飛べたよ!コトリさんが飛べたよ!」
「うん。良かった」
そこへ、2羽のトリがコトリのそばに飛んできた。
「トリ?」
「お父さんとお母さんだよ!」
「でも、もう南のほうへ行ってしまったんじゃ…」
「コトリさんのために戻ってきたんだよ、きっと」
トリとコトリは、一緒に仲良く飛びながら、二人の上を飛んでいたが、コトリだけ、ふたりのもとへ飛んでくると、サクラの指に、そっと降り立った。
「コトリさん、良かったね」
コトリは、ピピッピ!と鳴くと、ゆっくりとはばたいて、舞い上がった。
少しの間、3羽はふたりの上を飛んでいたが、やがて、地平線のほうへと飛んでいく
「ばいばーいっ!元気でねー!また、会おうねー!!」
力いっぱい、大きく手を振るサクラ。
「ひ…サクラ。どうして、コトリさんに名前をつけなかったんだ?」
「コトリさんには、名前、あるよ」
「それなら、どうしてですか?」
「だって、コトリさんにも、私や小狼みたいに、お父さんやお母さんがつけた名前があるはずだもん。私たちが、勝手に名前をつけたりしたらきっと失礼だよ」
「はい、そうですね」
そう言って、小狼は空を見上げた。
「小狼。わたしね、もしも、小狼がコトリさんみたいにケガをしちゃったら、コトリさんみたいに、ずっと一緒にいるよ」
心なしか、紅く染まったほほで、サクラはにっこり微笑んだ。
「ありがとうございます、姫」
小狼もつられて微笑む。
「もう、サ・ク・ラだってば」
「すみません」
ふたりは、くすっと言ったあと、弾けたように笑いあった。
もう、心にもやもやはなかった。なんだったんだろう?



「くすくす。小狼くんは最後まで気づかなかったようだね」
「ふんっ、小僧の分際で、嫉妬なんて生意気だ。しかもコトリなんかに」
「とーやも、サクラちゃんが小狼君に構ってるのを見てると不機嫌になるじゃない」
「うるせー…」







小狼はたぶん、嫉妬をしても、自分では気づかないんじゃないかと思いまして。
そしたら、こんな話になりました。
「小鳥のさえずり」なんて、ありきたりなタイトルですみません;
でも、好きな言葉なので、一度は使ってみたいなと思っていたのでv
サクラ姫と小狼の幼少期は、かわいくて、大好きです!
もっと、サクラ姫と小狼の幼少期のお話が出てきてくれるといいなーと思います!!

管理人:咲良 ひとむより
In this site.2008.04.12.up.