小鳥のさえずり


「・・・・・・えて」
誰かが、小さくつぶやいた。

だあれ?

「た・・・え・・・」

なあに?

たすけて!!
「え?!」
突然の叫び声に、サクラは目を覚ました。
「あれ?わたし、寝ちゃってたの?」
まわりを見渡すと、草の上に自分がいることに気づいた。ここは、外。
「そういえば、わたし、小狼とお話ししてて・・・」
となりを見ると、小狼は、サクラの音に気づいたのか、目を覚ましたところだった。
あ、小狼の寝顔、見そびれちゃった。
サクラは、小狼に抱きつきたいと思って・・・・・抱きついた。
「わっ!サ、サクラ姫!」
「サ・ク・ラだってば!あっ、ねぇ小狼。今ね・・・あ」
「あ?」
「また、今声が・・・・・小狼、こっち!」
そう言うと、サクラは突然走り出す。小狼はその後ろをあわてて追う。
「サクラッ!どうしたんだ?!」
「呼んでるの。たすけてって言ってるの」
「誰が?」
「・・・分からない。でも、たすけてって言ってるんだもん!助けに行かなきゃ!」

どれくらい走ったのか。町の外れまで来たとき、サクラはようやく立ち止まった。
「あなただったのね。ここまで、頑張って来たんだね」
言いながら、サクラはそっと、地面のある一点に近づいていく。
そこには、コトリが一羽、倒れていた。
「小狼、早く雪兎さんのところに連れていこう!」
突然のことに呆然としていた小狼は、その言葉で我に返った。そして、コトリを抱えているサクラとともに、雪兎さんの元へと、また走り出す。

城に戻る頃には、太陽が玖楼国の土を紅く染め上げていた。
王である桃矢と話を話していた雪兎は、息を切らしながら駆け込んできた二人に、一瞬驚いていたが、すぐに事態を察したようだ。
いつものやさしい声で、大丈夫ですよ、と、サクラと小狼に微笑んでくれた。
その言葉に、二人は安心したようだ。二人は、往復で二回も走ったせいもあり、へとへとだったので、その場にへたり込んでしまった。

「さあ、もう大丈夫です。つばさに軽くけがを負っていただけですから、一週間もすれば、飛べるようになりますよ。」
「雪兎さん、治してくれてありがとうございます」
「雪兎さん、ありがとうございます」
ぺこっと、サクラと小狼は頭を下げる。
「いえ、あなた方が連れて来てくれなかったら、この子は助からなかったでしょう。私の方こそ、ありがとうございます」
「コトリさんが、頑張って町まで飛んできて、わたしを呼んでくれたからです」
にっこり笑うサクラ。ふと、何かを思いついたようだ。
「雪兎さん、コトリさんが飛べるようになるまで、わたしがお世話してもいいですか?」
「おれも、サクラ姫と一緒に」
「ええ。コトリさんもきっとお喜びになられますよ」
雪兎から、つばさに、きれいに包帯を巻かれたコトリを受け取るサクラ。
その表情は、とってもうれしそうだ。
「そうだ、わたし、昨日町の人からいただいたリンゴ持ってくるね」
そう言い残して、部屋を出て行った。
小狼は、その後ろ姿を、やさしい瞳で見つめていた。







一度、旧サイトにアップした話なんですが、この話だけは、データを保存する前に削除してしまい、話の内容を思い出しながら書いたので、リメイクとはやっぱり違うかなぁと思います。
それに、確か前の時は、1ページで話が終わってた気がしますし・・・・・(ぁ
小狼が雪兎さんをどう呼ぶのかっていう資料がなかったので、呼び方はサクラちゃんに合わせました(苦笑)
管理人の脳内では、ツバサの旅の前のサクラちゃんは、CCSのさくらちゃんより、小狼に積極的に抱きついたりしてくれるので、書いていて楽しいです*
それに、こういう話は、いろいろなモノの声を聞ける姫でないとできないお話ですしね。

管理人:咲良 ひとむより
In this site.2008.03.09.up.