時折、なびく 第6話 〜テストの日〜


早朝。朝練があるときの時間に、目覚ましが鳴る。
別に今日は朝練があるわけではないけれど。
だって、今日は数学のリベンジの日なんだから。



前回の定期テストが、たまたまちょうど簡単なトコの範囲で、数学の先生と塾の先生の指導力、数学担任がバスケ部の顧問というプレッシャーから、わたしは珍しく、とってもイイ点を取ったのだ。
回答用紙を受け取ったときのわたしの歓喜は、しかし、答え合わせのときにボロボロに崩された。
理由は簡単。先生がバスケ部の顧問だったから。
さらに言うと、なんでも包み隠さず言うのが好きで、そこが受けていた人だったから。

「問2の(3)はx=3yだ。ここだけだったな、蝉野。惜しかったな」
「えー、蝉野くん、98点!?」
周りがざわつく。
わたしは、蝉野くんの点数にももちろん少しびっくりしたけど、それとは別に胸が不安でざわついた。
テストの答え合わせは続けられる。
「問6の(5)、ここは(1)間違えてた人はやっぱり合ってるはずないよな。4ax×3/2byは、(1)の 答えを代入して、48だ」
「……」
穂蘭 、」
「…はい」
「穂蘭はここだけだったなぁ。惜しかったなぁ〜、あと1問だったのに。なんで(1)は合ってたのに、ここまできて間違えるんだ。集中切れるの早くないか?」
「〜〜〜!」
なによ、蝉野くんは“惜しかったな”だけで、私には二言も三言も多いの?!こうなったら、次こそは満点とってやるんだから…!
わたしは悔し涙で目を潤ませながら、そう誓った。

と、いうワケなのだ。
ガラッと教室のドアが開いたので振り向くと、のんちゃんだった。
「おはよう、はる」
「あ、おはよう、のんちゃん!」
「早いね、どうしたの?」
「リベンジだから!」
「ああ、前回の数学かぁ。そっか、頑張ってね」
「うん、ありがと!」
わたしが変な顔でもしていたのか、くすっとのんちゃんが小さく笑ったかと思うと、さあて私は社会かな、と言って、自身の社会のまとめノートを出して、隣の自分の席に座った。
わたしも、手元に広げていたノートに目を戻す。
公式を見直して、先生が出すって言ってた例題見直して…。
そろそろ生徒が集まってきた。みんな、いつもよりも早い集合。
いつもの教室とは違い、みんな教科書や暗記カードを手に持ち、はしゃいだ顔は幾分か隠れている。
中には、駄目だよ、無理だーなどと呻きながら、もう教科書を出しもしない人もいるケド。
「ねぇ、のんちゃん。鳴村、諦め組にいるよ?」
「気になる?」
「うーん、そうでもない」
「はいはい、美里は数学に集中する!あと10分よ」
「本当だ、やば!」
今度はドリルを開いて、舐めるようにぺらぺらとページをめくる。

キーンコーン
バサッバサバサッ
目の前の白い紙をめくって現れた問題たち
忘れないように、一番最初に名前を書いて。
本番だ。






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