時折、なびく 第7話 〜大変動の日〜


ちょっと緊張する・・・。何度も見直して、間違いはなかった、はず。
でも逆に、間違いがなかったように感じると不安になるというもので…。
今日はテストの返却日。次の時間は数学だ。
わたしはもちろん、リベンジの数学が一番気になっている。
そわそわしていると、浩果ちゃんが話しかけてきた。
浩果ちゃんは自信があるのか、それとも開き直っているのか、楽しそうな笑顔だった。
「出来はどう?私最悪だったよ。だから返ってくんの怖い」
出来は悪くないと思う、たぶん。見直した段階では間違いなかったはずだし。
でもここで自信あるっぽく言うのもなあ。実際自信があるワケじゃないし。
「…わたしも返ってくるの怖いよ!今もそわそわしてるし」
「だよね!私今回全然勉強してないから、無理だもん」
きっと謙遜だね、浩果ちゃんのことだし。
「うん、わたしもだよ!」

先生は教壇まで、一人ずつ順番に呼んで、それぞれに一言ずつ言いながら、テスト用紙を渡していく。
わたしは両手をぎゅっとあてて、名前を呼ばれるのを待つ。
穂蘭」
「はい」
ドキドキしながらいくと、先生は怪しげな笑みを浮かべていた。これは、どっちだ。
その笑顔に、微かに威圧されたような気分になり、背を丸めた。
泥で汚れたお気に入りのぬいぐるみのように、早く受け取りたいケド、受け取りがたかった
でも、後ろも詰まってしまうコトだし、と自分に言い聞かせ、先生から赤と黒の丸やら数字やらがうっすら見える白い紙を裏向きで受け取った。
自分のもとへ引き寄せつつ、点数の書いてあると思しきところだけちらりとめくる。
そこへタイミング良く、先生は口を開いた。
「お前に言うことは何もない」
にやりと先生は笑い、わたしは目を見張った。そこには、「100」と書いてあった。きれいに。
わっ、わ!わわわっ!
声にならないままに、席に戻る途中、早速に浩果ちゃんに点数を聞かれた。
「どうだった?私なんて先生に、勉強してないだろ、基礎も応用もできてないな。って言われちゃったよ」
「あ、えっと・・・、わたしなんて!わたしなんて、何も言うことないって、見放されちゃったよ」
あははと笑って、返すにとどめた。どういえばいいのだろう。
「やー、今回は簡単だったなあ!気に入ってる野球のチームが勝っていたからな」
テストを返し終わった先生は、意気揚々と教壇上で、歩き回って見せたりする。
ああ、せっかく満点取ってもそういうこという・・・。
認めてもらえてるのは分かってるけど、そういうふうに言われると悔しい。
おもむろに先生はにやにやした顔で、生徒の方に顔を向けた。
「満点はひとりだ。穂蘭、まあ頑張ったな」
周りから、おおっとどよめきが生まれる。
予想はしてたケド…言われてしまった・・・。
のんちゃんがウィンクと上に突き立てた親指を伸ばしてきたので、一緒に喜んでくれているたのだと、わたしも笑顔で親指を立ててウィンクを返した。
「次点は98点で、皺蒔蝉野鳴村だ
え、鳴村?あのとき遊んでたのに?鳴村の席の方を見ると、鳴村は相変わらずへらへらと笑っている。ふうん、やっぱり勉強していたんだなあ。
のんちゃんのほうをまた見ると、のんちゃんは冷めた目で鳴村を見ていた。
あのとき、のんちゃんは鳴村が影で勉強していたコトを知っていたのだろうか。
「なんだ、全然いいじゃん!」
授業後、浩果ちゃんがわたしの肩を、笑顔でバシンとひとつ叩いた。
「う、うん」
とりあえず、浩果ちゃんが笑顔だったので、ひとまず安心して胸をなでおろした。






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